まやまやのひきこもり脱出記

ひきこもり脱出記

ひきこもり脱出記〜身体を疲れさせる効用

生粋の文化系(not 体育系)


 私は小中高全て文化系の部活動をしてきた上に、趣味も全部インドアで、全く運動をする習慣がありませんでした。起きている間は頭はフル回転で常に何かを考えていました。自分のこと、家族のこと、友人のこと、勉強のこと、将来のこと‥楽しいことならまだいいのですが、楽しくないことを、同じ視点で何度も何度もぐるぐると考えてました。
 不確定なことを何度考えても、何かが変わるわけでもなく、考えれば考えるほど、自分は恵まれない環境下の不幸な人間に思えていました。ただただじっと座って不幸を噛み締めているだけでした。そして体重と皮下脂肪は増えていくだけ‥


運動とは専心の連続


 ひきこもりを脱した後、ボールルームダンスに興味を持ち、扁平足なのに7センチのヒールを履いて踊ってみることにしました。ワルツを優雅に踊れるようになりたい。その一心で始めました。それまで運動経験ゼロだったので、初めは動かず立っていることも、真っ直ぐ歩くのも一苦労でした。
 身体を使うということは、ひとつひとつに専心を必要とする作業でした。
姿勢を保つ感覚に集中すること、重心がどこにあるのか意識すること、どの筋肉をどれくらいの力で動かすのか制御するのか、目線や表情はどのように保つのか。一秒だって気を抜く暇はありません。
 でも考えて動いていると、先生から「機械みたいだ」「全く楽しそうに見えない」「頭で考えずに動け」とお叱りを受けます。意識すれば意識するほど動きがガチガチになります。
 機械のような動きにならないためには、千本ノックのように、何度も何度も練習あるのみです。とにかく骨と筋肉と脳みそが動きを覚えるまで、馬鹿みたいに繰り返します。
 そうすると、できるようになる瞬間が現れるようになります。ボールルームダンスではムーブメントと呼ぶのですが、遠心力や振り子の原理を使って、脱力した瞬間に身体がフワッと美しい軌道を描いて余韻を感じることができるようになります。高校時代、物理学の運動方程式や公式の美しさや完璧さに恍惚を感じるほどだった私は、数式を自分の身体で実現したことに感動を覚えたものです。はっきり言って変態ですが、踊るたびに感動していました。多分、生まれつき運動能力の高い人は、幼少期から無意識に身体をハンドリングしているのでこんなしょうもないことで感動しないでしょう。

 

考えている暇なんてない


 ボールルームダンスを始めたら、自分があまりにも運動音痴で、平衡感覚も筋力も何もかも足りないことに気づきました。クラシックバレエ、ジムでの筋トレ、ジョギング、とありとあらゆることを始めました。
 自分の身体(筋肉)に集中している時は、何かを考える暇なんてありません。全力疾走でジョギングしている時、ジムで限界の最後の1セットをしている時に、かつて家でじっと座って考えていたような細々とした事ごとを思い出す余裕なんてありません。ただ今やっている、20回目の腹筋をやり遂げることしか考えていません。

 

今、目の前のことに集中する

 

 ひきこもっている時は、過去・現在・未来を考える比重は過去と未来でほとんど占められていました。現在を考える隙がないほどに。

 過去のことはいくら考えても何も変わりません。昔は懐かしむか、後悔するかのどちらかくらいです。過去は経験から現在の行動に繋ぐためだけに振り返るべきです。また、未来のことを考えすぎるのは良くありません。なりたい未来を思い描いたら、そこから逆算して今何をすべきか、今どうあるべきかという思考にエネルギーを注ぐべきです。
 何かのせいで心が乱れてきたら、今、目の前のことに集中する、ようにしています。
 眠りにつく時に、今日あった嫌なことが走馬灯のように思い出される時は、自分の心臓の鼓動に意識を集中してみます。私はこんなに嫌なことに飲みこまれて死にたいくらいの気持ちでいるけど、私の身体は何も考えず一心不乱に規則正しく心臓のポンプを動かしてくれている。休まずに働いて私を生かそうとしてくれている。心疾患にならない限り、私が止めようとしない限り、100年近く心臓は健気にこの動きを止めようとしない。生きているってそういうことなのだ。

考えることに疲れたら
 四六時中考えることに疲れたら、なんでもいいから身体を動かしてみてほしい。運動が苦手なら早歩きでいい。人に会うのが怖いなら、サングラスと帽子で人の視線に晒されないようにすればいい。できたら、朝か昼、太陽が出ている時に外に出てみてください。歩く範囲に、木々や花、鳥や犬猫、何か自然や動物に出会うと尚良いです。
 自然は何も考えずに、今日も生の営みを繰り返しています。春がきたから芽吹く、夏が来たから葉を拡げる。秋と冬は次の春に向けての準備期間。動物は、本能のままに活動しています。お腹が空いたら食べ物を探すし、怒ったら吠えたり引っ掻きます。人間の感情とは無縁の世界。
 自分の頭の中を占めている考え事は、自分の中だけの出来事や事件にすぎないと気づきます。
 歩く時、走る時、自分の足裏のどこがどのように地面を捉えているか集中してみます。重心は足裏のどこに集中しているか、歩幅は大きいか。呼吸は多いか。手はしっかり振っているか。
 自分の身体に集中して、自分の身体と対話してみてください。頭だけではなく指先まで全部の身体を意識してみてください。そして、今日も故障なく働いてくれていることは当たり前ではないことにも思いを馳せてみてください。自分というものの捉え方が少し変わってくるはずです。

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